JMC海事振興セミナー

Seminar

第7回JMC海事振興セミナー
「コンテナ船業界の現状と今後の見通し」
を開催しました。

開催概要  新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、市況の変動やサプライチェーンの混乱と合わせ注目を集めた海上コンテナ輸送だが、直近では運賃の下落をはじめ世界経済・貿易の動向による、船舶の需給バランスの変化、環境規制への対応など取り巻く環境は大きく変化している。
 本セミナーでは、第1回セミナーに続いて海上コンテナ輸送を対象に、当センターにて公表している各種統計などから現在のコンテナ船市場の概況に関する報告に加え、事業に関する動向、取り巻く環境の変化や今後の見通しについて、3月に日本-北米東岸サービスを開設したCMA-CGM、邦船3社が設立したONE、ならびにコンテナ輸送に関する専門家であり複数の著書も執筆している研究者によるご講演をいただき、最近の情報の把握や今後の展望への洞察を深めることを目的とする。
日時 2023年7月13日(木) 14:00 ~ 16:00
開催方法 ハイブリッド形式(Zoomウェビナー併用)                                     
開会挨拶

(公財)日本海事センター会長 宿利 正史

開会挨拶

開会挨拶動画

ご講演

(公財)日本海事センター 企画研究部 研究員 後藤 洋政

講演資料

講演動画

略歴

ご講演

CMA CGM Japan(株)代表取締役社長 内田 秀樹 氏

講演資料

講演動画

略歴

ご講演

オーシャン ネットワーク エクスプレス ジャパン(株)取締役専務執行役員 戸田 潤 氏

講演資料

講演動画

略歴

ご講演・総評

拓殖大学 商学部 教授(日本海事センター 客員研究員)松田 琢磨 氏

講演資料

講演動画

略歴

閉会挨拶

(公財)日本海事センター理事長 平垣内 久隆

閉会挨拶

閉会挨拶動画

セミナー動画
(通し)
https://www.youtube.com/watch?v=LuQBKepokyw

当日のプログラム

第7回JMC海事振興セミナーの開催結果(概要)

1.       開催の概要

 令和5年713日、東京都千代田区麹町の海事センタービル4階会議室において、第7JMC海事振興セミナーを開催した。

 当日は、「コンテナ船業界の現状と今後の見通し」と題して、ZOOMを活用したオンライン配信を実施し、830名を超える視聴者から参加登録をいただき、盛況裡に開催することができた。

 

2.       講演内容

(1)「海上コンテナ輸送の概況 -荷動き・市況・船舶等の動向-」

日本海事センター 企画研究部 研究員 後藤 洋政

2020年以降を中心に、海上コンテナ輸送の荷動き、市況、船舶の動向について、資料に基づき報告。まず、主要航路における荷動き量の動向について、各種統計をもとに増減の状況やその要因の説明があった。

そして、船腹量と市況の動向について、統計データをもとに変動の状況とトピックを説明のうえ、まとめとして、コロナ禍により、海上コンテナ輸送の市場環境が大きく変動したが、足もとでは社会経済活動が正常化しており、新たな節目となる時期であるとしたうえで、今後のコンテナ輸送の需給に影響する点をあげ、注目すべき事柄の紹介があった。

 

(2)「海運業界の今後の動向とチャレンジ」

CMA-CGM Japan代表取締役社長 内田 秀樹氏

 CMA CGMグループについて、資料に基づき紹介。海運業界の現状・予測として、新造船の増加と大型化ならびに海上運賃が19か月にわたって上昇してピークに達し、6か月で20205月の水準に急降下したことについて説明があり、今後の需要・供給の見通しを述べられた。

 脱炭素化について、新燃料船の導入といったCMA-CGMの取り組みの説明の後、日本港湾への基幹航路の寄港回数が減少していることに言及し、CMA-CGMの取り組みとして、北米東岸サービスの横浜寄港に関する説明があった。

まとめとして、2023年後半は需要回復に期待しつつ、2024年以降の需給バランスについて、地政学的リスクも含めウォッチすること、今後新燃料への転換が加速するなかで、さらなる情報の分析と明確化を図ること、日本において寄港数の維持拡大につなげるための産業の動向に関して説明があった。

 

(3)「コンテナ輸送の課題と ONE の対応について」

オーシャン ネットワーク エクスプレス ジャパン取締役専務執行役員 戸田 潤⽒

 コロナ禍の影響について、北米西岸サービスの航海日数の推移、北米往航運賃市況、平均遅延日数等のデータから説明し、過去のONEの対応を紹介。

足もとの事業環境として、ポストコロナのコンテナ船事業として、港湾や内陸輸送インフラの機能が正常化しているなかで、サプライチェーンの強靭化、再構築ならびにEV関連輸送といった需要を取り込むことへの説明があった。

今後の取り組みとして、定曜日Weeklyサービスの維持を徹底すること、本船運航をはじめ各種オペレーションやブッキングに関するサービス品質を向上すること、脱炭素化対応としてすでにCO2排出量をWEB上で算出できるシステムを導入しているが、EUETSの導入に向けて排出量取引コスト転嫁スキームを整備することについての紹介があった。そして、原点に立ち返り運航船スケジュールの遵守と貨物を予定通りお届けするというサービスを提供できるよう全社一丸で取り組むという言葉で締めくくられた。

 

(4)「海上コンテナ市場を取り巻く環境と今後のコンテナ輸送会社の役割」

拓殖大学 商学部 教授(日本海事センター客員研究員)松田 琢磨⽒

 直近のコンテナ輸送動向と見通しとして、世界のコンテナ荷動きの推移を示したうえで、輸送需要の減少背景を説明。また、供給面の動向もふまえ、市況の見通しを示した。現在の注目事項として、米国およびカナダ西岸港湾での労使交渉、パナマ運河の喫水制限、アジア欧州間の自動車・建機輸送を紹介した。中長期的には、eコマースの成長や経済の拡大をもとに荷動き量の増加が続くとし、2030年まで年平均3.1%の増加が見込まれると述べられた。

続いて、サプライチェーンの強靭化とコンテナ輸送会社の役割として、サプライチェーン複線化の動向についてメリット・デメリットをあげ説明し、デジタル化や自動化を活用して効率改善をすることの重要性も取り上げた。また、国際物流における持続可能性や環境負荷のトピックをあげ、コンテナ船社には、環境対応と強靭化を実現するサプライチェーンにおける強固なパートナーになることが求められるとまとめられた。

 

3.       松田教授から講演者に対する質問

(1)脱炭素化対応ということで、減速運航などの対応も出てくることになると思う。今後減速運航の影響で、リードタイムやサービスの頻度その他に変化が発生することはありうるのか。

内田氏回答

 スケジュールにはバッファーを持たせているため、その範囲内で減速運航分の差を吸収できている。港湾混雑が再び起きることとなれば、その影響を受けるため、追加で船舶を投入するといった対応を取らなければならないと考える。

戸田氏回答

 減速運航に合わせて船舶を入れ替え、トランジットタイムを維持するが、船齢は年々上がるため、リードタイムやサービスの頻度の維持のためには新造船の投入によって対応をすることを考えている。

 

(2)今後の荷主との安定したサプライチェーンのための取り組み案が挙げられていくと思う。そのうえで、コスト以外の問題でどのような点が課題として考えられるか。また、その問題を解決するために荷主側、船社側、さらには行政などが対応すべきことはあるか。

内田氏回答

 顧客との間でのデジタル化が重要であると考えられる。そのことで、船社としては配船やサービスの構築のための情報を得ることもできる。プラットフォームによって情報の共有ができればよりよいサービスの提供につながるため、官民の協働ですすめることが必要だと思う。

戸田氏回答

 船社の役割としては、適当な運賃で提示したスケジュールを守り定時運航をすることが基礎である。顧客の方の輸送量の見通しに基づいて、配船やサービスの提供をしているため提示いただく情報については、大きくブレないようにしてほしい。行政の対応をあげるとすれば、港湾の設備を船舶の変化に応じて更新することが重要である。

 

4.       視聴者・来場者からの質問

(1)日本のトランシップ貨物を増加させるには、内外船社が協力する必要があるのではないか。

戸田氏回答

 内航のコンテナ船社と協力して、横浜港や神戸港などの主要港を使って、基幹航路の貨物に関する運航をしている。この協力は必要ですし、現状取り組んでいるという認識です。

内田氏回答

 日本の内航船社とも協力して、国内港湾との接続に関しては、横浜港に輸送していただいている。2024年問題もあることから、内航の利用に関して、社内でも調査をすすめており、内航船社とより広く深く協力する余地があると思う。

 

(2)排出量に関して、IMOの目標が2050年に50%から100%となったが、新しい目標に応じて対策を講じているか。付属資料のプロダクトにおける排出量削減と料金の関係について伺いたい。

内田氏回答

 2050年に100%削減という目標については、以前からチェアマンがセミナー等での場において公言しており、会社としてコミットしている。プロダクトに関する料金設計は複雑であり、担当者から細かく説明差し上げたい。利用されている事業者は増えている。  

                                         

                                                           以上                                                          

                                                                                                                                                             

 

(注)

この結果概要は速報性を重視し、事務局の責任で編集しているものであり、発言の取り上げ不足やニュアンスの違い等がある場合があります。このため、正確な内容については必ず画像及び音声をご確認いただくようにお願いします。