JMC海事振興セミナー

Seminar

第8回JMC海事振興セミナー
「サプライチェーン最適化に向けた荷主と船社の協調関係の深化」
を開催しました。

開催概要  コロナ禍に伴う海上コンテナ輸送の混乱で、グローバルサプライチェーンは困難に直面した。海上コンテナ輸送の状況は正常化したものの、物流の混乱を通じて、サプライチェーンの強靭化が大きな課題となったほか、デジタル技術を活用したサプライチェーン全体の把握やサプライチェーン全体のグリーン化への取組なども急務の課題となっている。
 我が国の製造業を中心として、国際分業体制が進む中で、日本の中間財の海外依存度が進み、サプライチェーンの脆弱性はますます高まってきている。そのような中、荷主と船社の協調により、サプライチェーン全体の脆弱性を克服し、最適化を追求する動きが進んでいる。
 このような取組の紹介とともに、サプライチェーンの最適化の課題とグローバルな競争力の向上に向けて、荷主と船社を代表する企業及び団体との間で意見交換を行う。
日時 2023年12月6日(水) 14:00 ~ 16:00
開催方法 ハイブリッド形式(Zoomウェビナー併用) 
場所 海事センタービル4階会議室
(〒102-0083 東京都千代田区麹町4-5)
開会挨拶

(公財)日本海事センター会長 宿利 正史

開会挨拶

開会挨拶

ご講演

(公社)日本ロジスティクスシステム協会 
JILS総合研究所 新領域開発エキスパート 遠藤 直也 氏

※講演者の事情により資料及び動画の掲載はございません。

略歴

ご講演

オーシャン ネットワーク エクスプレス ジャパン(株) 代表取締役社長 中井 拓志 氏

講演資料

サプライチェーン最適化に向けたONEの取組み

略歴

ご講演
ご講演

(公財)日本海事センター客員研究員 福山 秀夫

講演資料

荷主と船社のWin-Winのパートナーシップの構築に向けて

略歴

パネルディスカッション

拓殖大学商学部教授/日本海事センター客員研究員 松田 琢磨

パネルディスカッション

略歴

閉会挨拶

(公財)日本海事センター常務理事 下野 元也

閉会挨拶

閉会挨拶

当日のプログラム

第8回JMC海事振興セミナーの開催結果(概要)


1.開催の概要

令和5126日、海事センタービル4階会議室において、第8JMC海事振興セミナーを開催しました。

今回は、「サプライチェーン最適化に向けた荷主と船社の協調関係の深化」と題して、ZOOMを活用したオンライン配信を実施し、多くの視聴者から参加登録をいただき、盛況裡に開催することができました。

 

2.講演内容

(1)公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 JILS総合研究所 新領域開発エキスパート 遠藤 直也 様

「コロナ禍で浮き彫りになったサプライチェーンの課題と最適化に向けた荷主における取組と展望」

 最初に、JILSは荷主が参加する団体であり、コロナ後の国際物流強靭化推進を推進し、様々な荷主の意見を収集しながら、ソリューションを提案している組織であるとの説明がありました。また、会員荷主の4割が、コロナ禍でのサプライチェーンの途絶を経験したというアンケート結果から、サプライチェーンの再構築が大手荷主の間で進行しており、貨物動静情報や本船動静情報などのデータの可視化やSCM(サプライチェーンマネージメント)と物流の同期化を課題として、SCM高度化に資する物流管理モデルを2024年に提示することを展望しながら取り組んでいる、との説明がありました。

 

 (2)オーシャン ネットワーク エクスプレス ジャパン株式会社 代表取締役社長 中井 拓志 様

「サプライチェーン最適化に向けたONEの取組み」

 ONEでは、コロナ禍の世界的な海上コンテナ輸送の混乱を受けて、荷主のための運航船スケジュールの順守と貨物の到着時間の厳守のサービスの提供を第1の課題として追及しているとの説明がありました。さらに、グリーン戦略における7つのイニシアチブの具体的事例として、船隊整備・既存船の改修への取組 (最新の運航システムの搭載、船隊設計の最適化等)・2050年のネットゼロ達成等の取組が紹介され、成長戦略として、航路拡充と新技術を活用したコンテナ投資、DX化、2024年問題や環境対応としてCRU/ICDの展開・活用、内航フィーダーを活用したモーダルシフト等に積極的に取組んでいることを紹介されました。

 

 (3)株式会社クボタ 物流統括部担当部長 武山 義知 様

 「CRU/ICDの有効活用と官民連携・複数企業連携による日本の国際物流最適化」

 コロナ禍の物流混乱、トラックドライバーの不足の加速、港湾エリアの慢性的渋滞によるトラックの定時性の崩壊等に対応するため、ICD(インランドコンテナデポ)におけるCRU(コンテナラウンドユース)の活用が重要との認識について、クボタのビジネスを踏まえた説明があり、CRUの長所、関西と関東に分布するICDICP等の情報を踏まえたCO2削減、2024年問題への効果について解説されました。また、国際戦略港湾と連携する地方港開発を内航フィーダー活用によって、企業連携・官民連携で実現すべきとの意見を述べられ、事例として常陸那珂港と京浜港の接続の取組を挙げられました。これらの取組は、コロナ後も引き続き解決すべき課題への対応として取り組まなければならないとの指摘がありました。

 

(4)日本海事センター客員研究員 福山 秀夫

「荷主と船社のWinWinのパートナーシップの構築に向けて」

 コロナ禍の物流の混乱を受けて、コロナ後は、グローバル・サプライチェーンの強靭化、最適化(効率性・計画性・持続可能性の実現)に向けた物流プロセスを実現することが必要であり、今後の取組の方向性として、荷主と船社の連携、ルート情報の把握・デジタル化、脱炭素化、2024年問題を中心に取り組む必要があると説明しました。そして、3名の登壇者の講演で明らかになったことを受けて、JILSが指摘した「物流競争ランキング」における日本の13位というランクダウンが、「国際輸送コスト」、「定時性」、「貨物追跡」という問題を中心に起こっていることは、「基幹航路の少なさ」による「日本の港湾の競争力低下」、「デジタル化の遅れ」、「CRUICDなどの取組の遅れ」、「荷主と船社の連携・協調の遅れ」を意味すると指摘しました。3名の講演により、コロナ後のコンテナ海上輸送の競争力向上は、グローバル・サプライチェーン最適化に関して、荷主と船社の協調関係とWinWinの考え方に基づいて実現される必要性が明確になったと指摘しました。

 

(5)パネルディスカッション

モデレーター: 拓殖大学商学部教授/日本海事センター客員研究員 松田 琢磨

1)遠藤様への質問と回答

「動静情報の正確性に関して、海運会社の責任についてどう考えるか」との質問に対し、「データの可視化は、荷主のSCMにとって重要であり、どの程度の精度が必要なのか、ゴールを共有しながら、荷主と船社が協調し理解を深めあいながら、相互信頼のもとで、論点を定め議論を深める必要があると考える。それが産業競争力にもつながるのではないか。」との回答がありました。

 

2)中井様への質問と回答

「インランドコンテナデポ(ICD)の立地条件は何か、複数船社の連携についての実務面の問題点は何か」という質問に対し、「立地は交通アクセスのよい利便性の高い場所であることが大事で、取扱量を増やすことが大事である。また、修繕やクリーニングなどのコンテナ品質を確保する技術や機能が必要と考える。」と回答がありました。また、「複数船社の連携」については、実務面では、アライアンスは独禁法の問題があり、法律に抵触しない範囲で対応している。コンテナは、基本的には船社の商品であり、輸出入の輸送が異なる船社を利用する場合、コンテナの箱回しは事業戦略でもあり、それ相応の難しさはあるが、ICDCRUはコンテナ利用のバランスを考慮しながら、荷主のために、案件ごとに対応している。」と回答がありました。

 

3)武山様への質問と回答

ICDが関東や関西の地域にかなり分散しているが、この分散のICD利用に与える影響は何か、CRUのマッチングに関し、ICD間のアライアンスのようなものはあるか。」との質問に対し、「ICDは立地条件の良いところにある必要があるが、日本の場合は、ICDの大きさは300TEU程度あり、小さいとは言えない。コンテナを長期間蔵置することは問題であることは理解しており、バランスよく管理している。例えば、つくばでマッチング率を上げるためには、多くの輸入企業との契約が必要であるが、船社との契約により、マッチングの可能・不可能が荷主により変化してくるので、それを考慮しつつ、他の荷主と共同で活動したり、荷主や自治体などのネットワークで日常的に緊密につながり、運べるオプションを増やしたりして、マッチング率向上に努めている。」との回答がありました。

 

4)福山への質問と回答

「ラウンドユースをさらに発展させるためには中国・韓国の貨物を誘致する必要があると思うが、どのように考えるか。」との質問に対し、「日中韓物流大臣会合などの枠組みを使って、官を交えて協力をしてネットワークを拡大していく必要があるのではないか」との回答がありました。

 

5)視聴者からの質問と回答

    (遠藤様への質問)DX化に関し、中小企業は個社ではコスト的にリスクがあり、対応しづらいので、国主導で安心できるシステムを作ってほしいが、どう考えるか。

(遠藤様の回答)JILSで現在取り組んでいる動静情報の可視化に関しては、中小企業も取り組めるよう、国を交えて一緒に仕組みを構築することを考えている。

    (中井様への質問)定期船の定時性順守について、現実は、頻繁に抜港ルート変更が発生しているが、対応方法はないものか。

(中井様の回答)港の混雑などによって遅れることがあり、荷主の皆様には申し訳ないと思っている。今後は、航路ごとのスケジュールの組み方、環境対応のための隻数投入等により、定時性の高い航路設計をしたい。

    (中井様への質問)現在開催中のCOP28で、MSCCMA-CGMからGHG課税の強化により代替燃料と既存燃料の価格差をなくしてほしいとの話が出ているが、この点どう思うか。

(中井様の回答)現在Scope3の段階で、社長自身としては、シンガポール本社とまだ詳細について話したことはないので明確な回答はできないが、各社代替燃料については戦略的なものがあり様々な考え方で対応しているということだけは、触れておきたい。

 

(注)

なお、この概要は速報性を重視し、事務局の責任で編集しているものであり、発言の取り上げの不足やニュアンスの違い等がある場合がありますので、正確な内容については必ず画像と音声をご確認頂くようにお願いします

 

                                 以上