フォーラム・講演会

Forum

第34回海事立国フォーラム in 北海道 2024
「ゼロカーボン社会の実現を目指して~海事における脱炭素化への挑戦~」
を開催しました。

開催概要 北海道は国土の22%を占める広大な面積を有する一方、四面を海に囲まれ、北海道の輸送は海運への依存度が極めて高くなっています。このため、北海道では社会経済を支える海上輸送ネットワークの拡大とこれに伴う農水産物・食品等の輸出促進への取組が強く求められています。
また、北海道は循環型社会の形成による環境負荷の低減、次世代エネルギーの供給等において全国を先導する先進地域であり、2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す「ゼロカーボン北海道」の実現に向けた取組が強力に推進されており、海事分野においてもゼロカーボン社会の実現への大きな貢献が期待されています。
海事における脱炭素化の取組はゼロカーボン社会の実現に大きく寄与すると期待される一方、技術開発及び巨額の投資、代替燃料のサプライチェーンの構築、新技術に対応できる海事人材の確保・育成など様々な課題を抱えています。このため、関係企業等からの取組の紹介とともに今後の展望について意見交換を行いました。
日時 2024年10月10日(木) 14:00 ~ 18:00
開催方法 実開催(YouTube配信あり)
開催場所 北海道苫小牧市 グランドホテルニュー王子
3階「グランドホール南」
(〒053-0022 北海道苫小牧市表町4-3-1)
主催 公益財団法人 日本海事センター
後援 国土交通省
協力 北海道運輸局、株式会社商船三井、苫小牧市、苫小牧商工会議所
開会挨拶

(公財)日本海事センター会長 宿利 正史

開会挨拶

開会挨拶動画

略歴

来賓挨拶

北海道知事 鈴木 直道 氏
(代読 副知事 浦本 元人 氏)

来賓挨拶動画

来賓挨拶

北海道運輸局長 井上 健二 氏

来賓挨拶

略歴

来賓挨拶

苫小牧市長 岩倉 博文 氏
(代読 苫小牧市副市長 木村 淳 氏)

来賓挨拶動画

略歴

講演

株式会社商船三井 代表取締役社長執行委員 橋本 剛 氏

講演資料

講演動画

略歴

講演

Rapidus株式会社 生産管理部ディレクター 上田 保夫 氏

※講演者の事情により資料及び動画の掲載はございません。

略歴

研究発表

(公財)日本海事センター主任研究員 森本 清二郎

講演資料

講演動画

略歴

モデレーター

(公財)日本海事センター客員研究員 兼 拓殖大学商学部教授 松田 琢磨

パネルディスカッション動画

略歴

パネリスト

出光興産株式会社北海道製油所副所長 飯沼 牧子 氏

講演資料

パネルディスカッション動画

略歴

パネリスト

北海道大学大学院工学研究院教授 石井 一英 氏

講演資料

パネルディスカッション動画

略歴

パネリスト

北海道運輸局次長 鵜山 久 氏

講演資料

パネルディスカッション動画

略歴

パネリスト

北海道経済部資源エネルギー局長兼ゼロカーボン推進局風力担当局長
西岡 孝一郎 氏

講演資料

パネルディスカッション動画

略歴

閉会挨拶

公益財団法人日本海事センター 理事長 平垣内 久隆

閉会挨拶

閉会挨拶動画

略歴

フォーラム動画
(通し)
https://youtu.be/Q4fG-w8U1oY

当日のプログラム

第34回海事立国フォーラム in 北海道 2024の開催結果(概要)

1.開催の概要

 令和6年10月10日、北海道苫小牧市グランドホテルニュー王子3階「グランドホール南」において第34回海事立国フォーラムin北海道を開催しました。
 当日は、「ゼロカーボン社会の実現を目指して~海事における脱炭素化への挑戦~」と題して、200名近い参加をいただき、YouTubeでもリアルタイム配信を実施し、盛況裡の開催となりました。
2.講演内容
【開会挨拶】 (公財)日本海事センター 会長 宿利 正史
(別添資料参照)

【来賓あいさつ】
北海道知事 鈴木直道氏(代読:浦本元人副知事)
北海道運輸局長 井上健二氏
苫小牧市長 岩倉博文氏(代読:木村淳副市長)

上記の三人の方から、
・北海道は「ゼロカーボン北海道」の取組を進めており、6月には「GX金融資産運用特区」の指定を受け、国内外において北海道でのゼロカーボンの取組を先導していること、
・北海道は再生可能エネルギーのポテンシャルを持っており、環境にやさしい船舶などの次世代船の導入も見込まれていること、
・苫小牧は港の発展とともに発展してきた街であり、次世代エネルギーの拠点として発展が見込まれていること、
・北海道は海運への依存度が高く、海上輸送ネットワークの拡大が見込まれていること、
・脱炭素化のフォーラムを行うことは大変意義深く、地元の関係者にとっても有益かつ貴重な交流の機会になると期待されること、
といったあいさつをいただきました。

【講演】「脱炭素化に向けた商船三井グループのチャレンジ」
㈱商船三井代表取締役社長執行役員 橋本剛氏

橋本代表取締役社長執行役員からは、
①クリーン代替燃料の導入などの運航船の排出削減努力に続き、再生可能エネルギー事業など、世界の海運業界をリードする企業として取組が進められている商船三井グループの紹介
②国際海運におけるGHG排出量の規制の動向に加え、商船三井グループの経営計画で環境戦略を主要戦略の一つとして位置づけ、環境ビジョン2.2を作成して、2050年までのネットゼロエミッション達成を目標に定めていることや低排出燃料船、次世代燃料船導入等の取組状況の説明
③カーボンニュートラル実現に向けた世界の動向に対応し、社会インフラ企業として洋上風力関連事業など商船三井グループの果たす役割を踏まえた次世代エネルギー事業に取り組んでいること
④北海道でのカーボンニュートラルのポテンシャルの高さと道内の動向に適切に対応し、道内において商船三井グループ各社によるカーボンニュートラル事業を展開していること、
など、脱炭素社会の実現に向けた商船三井グループの取組について紹介が行われました。

【講演】「次世代半導体の国産化と脱炭素型輸送システムへの取組」
Rapidus㈱生産管理部ディレクター 上田保夫氏

上田生産管理部マネージャーからは、
1990年代以降世界をけん引してきた日本の半導体事業の復活を目指して取組を進めているラピダス社の経営理念、人財育成、工場経営の歩み等についての説明の後、北海道における半導体材料物流のが抱える課題を踏まえた本州に拠点をもつ半導体材料の工場から北海道に向けた輸送に関して、脱炭素化に向けた取組とその効果(目標)等について説明が行われました。

【研究発表】 「国際海運におけるGHG削減の取組と次世代燃料への転換」
(公財)日本海事センター主任研究員 森本清二郎

当センター森本主任研究員からは、
IMOのGHG削減対策に関して、
・国際海運のGHG削減量と既存の対策の進捗状況、
・IMOにおける2050年までのネットゼロに向けたGHG削減戦略、
・世界で先行しているEUにおける海運分野のGHG削減対策、
・次世代燃料への転換に向けた欧州のe-fuelプロジェクト
等について説明を行いました。
まとめとして、
①IMОではGHG強度規制を軸に、well-to-wakeを考慮したGHGの削減対策が進められていること、
②EUでは2024年から海運EU-ETが導入され、2025年からはFuel EU Maritimeが導入されることなど、世界を先行して地域的な規制が始まっていること、
③EUでは特に再生可能エネルギー由来のRFNBOの普及を目指す方針であること
④EUの基準に適合する燃料の普及状況やIMOにおける国際基準の検討状況を踏まえながら、日本における次世代燃料の生産・供給体制の整備に取り組むことが重要であること
といった説明を行いました。

【パネルディスカッション】 
「ゼロカーボンに向けた取組と今後の展望~北海道における海事・物流・港湾の取組を中心に~」
モデレーター:日本海事センター客員研究員(拓殖大学商学部教授) 松田琢磨
パネリスト:出光興産㈱北海道製油所副所長 飯沼牧子氏
北海道大学大学院工学研究院教授 石井一英氏
      北海道運輸局次長 鵜山久氏
           北海道経済部資源エネルギー局長兼ゼロカーボン推進局風力担当局長 西岡孝一郎氏

当センター松田客員研究員をモデレーターとして、まず自己紹介とパネルディスカッションの趣旨等の説明が行われた後、各氏からそれぞれ資料に基づき、
・飯沼副所長より、北海道製油所の紹介と出光興産におけるCNXセンター化構想をはじめとした「地産地消のCNX」の取組および北海道における合成燃料の取組、バイオディーゼル燃料への取組、等の説明
・石井教授より、自己紹介と道内でのGXセミナー等の取組、そして脱炭素はあくまで「手段」であり、将来のまちづくりを見据えた取組がカギになること、等の説明
・鵜山次長より、北海道の海上輸送の動向とCO2削減に向けた航路の開設等の紹介、内航海運CN検討会のとりまとめ概要、等の説明
・西岡局長より、北海道におけるゼロカーボン北海道託すフォース等の取組と北海道の新エネルギーのポテンシャルを踏まえた洋上風力発電等の取組、産業誘致の動向、「GX金融・資産運用特区」の指定、等の説明が行われた後、質疑応答が行われました。

(1)【パネリスト同士の質疑応答】

パネリスト同士の質疑応答の概要は以下の通りでした。
・西岡氏から鵜山氏への質問
実用化に向けた安全性の確保や取扱ルールの厳格化といった課題について現時点で検討されているか?それともクリアする見通しなどがあるか。
・鵜山氏からの回答
アンモニアの普及には技術開発、生産基盤構築、投資促進、燃料供給体制整備など複数の取り組みが必要。国内では実証航海や商用化に向けた開発が進んでおり、2026年の実証運航開始から2030年以降の普及まで、段階的な目標が設定されている。

・石井氏から飯沼氏への質問
北海道製油所として、北海道ならではの地域特性に応じた「脱炭素化の燃料を収益化する」取組の方向性などを教えてほしい。
・飯沼氏からの回答
寒冷地特有の暖房・給湯需要や、レジリエンスの観点から灯油の重要性が指摘されていることに加え、ガソリンや軽油の需要が今後も継続すると予想され、合成燃料の供給を目指している。収益化が見込める状況を待ってから取り組んだのでは遅いため、出光興産は2050年ビジョンとして「変革をカタチに」を掲げ2050年カーボンニュートラル実現にむけて、多少のリスクテイクはしながらでも進める覚悟である。
 
・飯沼氏から西岡氏への質問
脱炭素化への企業の投資に対して道庁として今後の公的な支援措置や人材育成の方向性等についてどのように考えているか。
・西岡氏からの回答
北海道は「GX金融・資産運用特区」で税制優遇措置を検討中である。一方で再生可能エネルギーの導入拡大には、建設工事や設備維持管理の人手不足、そして脱炭素化を進める専門人材の確保・育成が課題であるほか、地域の盛り上げも重要である。

・鵜山氏から石井氏への質問
「バイオ燃料の可能性」について、その可能性や課題などについて教えてほしい
・石井氏からの回答
バイオマスは多様であり、ブラジル・米のバイオメタノール、EUのバイオディーゼル、日本ではバイオメタンがある。先ほどのA重油とバイオ燃料の混合燃料はいい取り組みだと思う。ただし、量が確保できるのかが課題であり、燃料は取り合いでもある。LNGとバイオメタンは相性がいいが、バイオメタンの原料であるてんぷら油は飼料に回るものであり、また、そもそも太陽から作られるものであり、使いすぎるとマイナスとなり使い放題ではない、ということに注意が必要である。

(2)【モデレーターからの質問】
モデレーターからパネリストへの質疑応答の概要は以下の通りでした。

・飯沼氏への質問
北海道においてe-fuelのサプライチェーンを構築するため、既存燃料のサプライチェーンを活用していくことになるのか。
・飯沼氏からの回答
合成燃料は既存燃料と性状が変わらないため、既存のガソリンスタンドやローリーなどのインフラをそのまま使っていくことができる。一方で、そのように合成してつくる燃料はまだまだ高額で今のレベルでは1リットル500~1,000円になるとも想定されているため、いかに安く安定的に供給できるようにしていくかが課題である。

・石井氏への質問
海事や物流産業においてバイオマスの社会的価値がどのようなところにあってそれをどのように見出していくか,バイオリファイナリーを構築するうえでどのような試みが考えられているのか、もしくはどのような方向性が現在考えられているのか。
・石井氏からの回答
CO2とH2でメタンやメタノールが作られるが、どこでつくっているかが海事・港湾では大事になってくると思われる。そもそも酪農は飼料等を輸入しており、家畜の糞尿でバイオメタンができるため、船をバイオメタンで動かすとなると、海事・港湾の脱炭素化に大きな貢献ができると考えられる。このように脱炭素化に向けて「モノづくり」とエネルギーをうまく回していくことが大事であり、たとえば砂糖であればセルロースをつくるなどバイオのモノづくりが肝心である。

・西岡氏への質問
今後の北海道におけるゼロカーボンに向けた取組事例として全国に注目してほしい取り組みがあればご紹介してほしい
・西岡氏からの回答
CCSの取組に加えて、今年6月に「GX金融・資産運用特区」が国に指定され、道内ではGX関連の取組も動き始めている。洋上風力発電事業においては、道内で「有望区域」に整理された5区域のうち、松前沖では、先般、促進区域の指定に向けた地域の合意を得たところである。洋上風力は関連産業の裾野が広く、経済波及効果や新たな雇用の創出も期待されることから、道としてもサプライチェーンの構築に取り組むとともに、必要となる人材の確保を支援するなど、発電事業の進展による道内産業や地域経済の活性化を図っていきたい。

(3)【登録申込者からの質問】

登録申込者からパネリストへの質疑応答の概要は以下の通りでした。

・鵜山氏への質問
中小企業の多い内航や造船などの業種において、どのようにしてCO2削減を推進していけばよいか。また、鉄道輸送との両立についての見解は。
・鵜山氏からの回答
当面、注力すべきは、新造船におけるハード面対策と、既存船における運航的手法及び燃料転換手法との組合せであり、新造船については、荷主等と連携することで省エネ・省CO2をさらに高度化した「連携型省エネ船」の開発・普及を進めること、既存船については、バイオ燃料の活用、荷主等と運航面でも連携した運航効率の改善、港湾における対応と歩調を合わせた停泊時のCO2排出削減を進めることも重要である。物流と環境の両観点から、海上輸送も鉄道輸送も重要であり、近年自然災害が多発している状況を鑑みれば、輸送手段の複線化を図ることが大切であると考える。


【総括コメント】
○松田 総括コメント
本パネルディスカッションでは、様々な課題に関して多角的な視点から議論がなされた。北海道の豊富な再生可能エネルギーポテンシャルを活かした取り組みが進められ、洋上風力発電や合成燃料の開発、バイオマスの活用などが進む一方でインフラ整備、人材育成、資金調達をはじめ多くの課題もあらためて浮き彫りになった。これらの課題に対しては、産学官の連携や、地域特性を活かした取り組みが重要である。
・北海道は自然エネルギーが豊富なポテンシャルが大きい地域であるが、脱炭素化に向けては単なるエネルギー政策として捉えるのではなく、エネルギー産業を含めた産業クラスターの集積や地域振興策などを目標にして取り組んでいくことが持続的な社会の発展のために重要であるということが改めて認識できた。

とのとりまとめのコメントがありました。

【閉会挨拶】 (公財)日本海事センター理事長 平垣内 久隆
(別添資料参照)

(注)以上の講演の結果概要につきましては、主催者側があくまで速報性を重視して作成したものですので、発言のニュアンス等を正確に再現できていない個所、あるいは重要な発言が欠落している箇所等がある可能性があります。
つきましては、発言の詳細や正確な発言を確認したい場合は必ずYouTubeを視聴してご確認いただくようお願いします。また、本結果概要の無断での転載等は控えていただくようお願いいたします。
(以上)