第1回JMC 海事振興セミナー
「新型コロナウイルス感染症の拡大等で大きく変貌するコンテナ船業界」
を開催しました。
開催概要 | 新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けた海運業について、コンテナ船部門を中心に、その概況に関する報告を行うとともに、サプライチェーンに与えた影響や今後の見通しについて、情報の共有や知見を深める場とする。 |
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日時 | 2022年3月14日(月) 14:00 ~ 16:00 |
開催方法 | オンライン(Zoom ウェビナー) |
開会挨拶 | |
発表 | |
講演 | |
講演 |
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講演・コーディネーター | |
閉会挨拶 | |
セミナー動画 (通し) |
https://www.youtube.com/watch?v=qRVbWMltnA4 |
講演者 略歴
公益財団法人 日本海事センター 研究員
後藤 洋政
慶應義塾大学商学部卒業、慶應義塾大学大学院商学研究科前期博士課程修了。大学院では、交通・公共政策・産業組織論を専攻。修士(商学)。 2019年4月から日本海事センター専門調査員。 2020年4月から現職。企画研究部において、国際海上コンテナ荷動きの統計調査や海運・物流に関する経済分析をはじめとする調査研究業務に携わる。 “The Impact of China’s Tightening Environmental Regulations on International Waste Trade and Logistics”(共著)で、 2021年度日本海運経済学会・国際交流賞を受賞。所属学会は、日本交通学会、日本海運経済学会。
オーシャン ネットワーク エクスプレス ジャパン株式会社 取締役 専務執行役員
戸田 潤 氏
1989年4月 | 川崎汽船株式会社入社 |
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2008年10月 | コンテナ船事業グループ資産管理チーム長 |
2017年1月 | コンテナ船航路管理グループ長 |
2018年1月 | Ocean Network Express Pte.Ltd. |
2020年4月 | Ocean Network Express (East Asia) Ltd. |
2021年4月 | オーシャンネットワークエクスプレスジャパン株式会社取締役 専務執行役員 |
エムエスシー ジャパン 代表取締役社長
甲斐 督英 氏
1994年 | 早稲田大学商学部卒 |
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1994年 | 住友建機株式会社 |
1998年 | P&O Nedlloyd Japan |
1999年 | エムエスシージャパン入社 |
2010年より現職
熊本県出身
拓殖大学 商学部 教授(日本海事センター客員研究員)
松田 琢磨 氏
拓殖大学商学部国際ビジネス学科教授、 (公財)日本海事センター 企画研究部客員研究員 。 1997年筑波大学第三学群社会工学類卒業 、 2016年東京工業大学大学院理工学研究科博士課程単位取得退学 。 博士(学術)(東京工業大学) 。 2007年(財)日本海事センター非常勤研究員 、 2011年(公財)日本海事センター研究員 、 2018年同主任研究員を経て、2020年より現職 。
第1回JMC海事振興セミナーの開催結果(概要)
(1) 開催の概要
令和4年3月14日、東京都千代田区麹町の海事センタービル4階会議室において、第1回JMC海事振興セミナーを開催いたしました。
当日は、「新型コロナウイルス感染症の拡大等で大きく変貌するコンテナ船業界」と題して、ZOOMを活用したオンラインセミナーを行いました。
750名を超える方々から参加登録をいただき、瞬間最高視聴者数は560名になるなど、盛況裡に終えることができました。
(2) 発表・講演
報告1「海上コンテナ荷動きと市況の動向‐2020年以降を中心に=」
発表者:(公財)日本海事センター 研究員 後藤 洋政
新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年以降の北米航路、欧州航路、アジア域内航路における荷動き動向や海上コンテナ運賃推移等の概況について報告をしました。2020年上期は中国発貨物を中心に大幅に海上コンテナ荷動きが減少した後、欧米を中心にモノの需要が高まり、荷動きが大きく増加しました。また、港湾や陸上輸送における需給ひっ迫も起こり、需要増と供給制約の影響でコンテナ運賃が上昇につながりました。さらに、コンテナ輸送サービスの供給面において傭船料、中古船も上昇したなど、コロナ禍により、海上コンテナ輸送をとりまく環境や置かれている状況が大きく変動していることについて報告を行いました。
報告2-1 「コンテナ輸送の現状とONEの取り組み」
講演者:オーシャンネットワークエクスプレスジャパン(株) 取締役 専務執行役員 戸田 潤 様
170のweeklyサービス、ネットワークで120か国を結ぶサービスを展開しているオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)の概要と脱炭素化への取組について紹介があった後、コンテナ輸送の現状とONEの取組について報告が行われました。
戸田様の発表では、まず、現在の状況を受けて、スケジュール維持に大きな影響が出て、船の遅延が輸送量の低下につながっていることが説明されました。昨年12月にはサンペドロ湾で100隻を超える滞船が発生した影響で、日本発着の船便の欠便が発生しており、今も港湾混雑が解消される目途は立っていません。そんな中で、ONEは臨時船3隻を投入し、西岸サービス「FP1」の2021年度第4四半期欠便率(輸出)が46%から23%に改善しているなどの効果が現れたと報告されました。
今後の懸念点として、コロナ感染、主要国での購買需要の推移、米国金利政策、北米西岸での労使交渉、ロシア・ウクライナ情勢などがある一方、ONEは、日本市場を最重要のマーケットの一つと認識しており、欠便しない限りブッキングを引き受けるなど最大限の対応をしていると述べておられました。
報告2-2「コンテナ海運物流の潮流」
講演者: エムエスシー ジャパン 代表取締役社長 甲斐 督英 様
甲斐様の発表では、まず、港湾混雑が雪だるま式に定時性低下につながっているメカニズムについて紹介が行った後、海上コンテナ物流の停滞で航路を維持するためにより多くの船腹・コンテナ船が必要である点が述べられました。この状況を受けてコロナ以前のサービス供給量を維持するための航路当たり隻数が7隻から10隻へと変化してきており、MSCとしては2019年比で20%の船腹量の増強と主要航路11航路の新規開設に努めている旨説明がありました。
また、コンテナ海運物流はサービス提供者と被提供者の双方によって完結する性質を持つサービスであり、不必要に高い質を求めないといった参加者の行動変容により物流の混乱は改善しうる、と荷主などにも協力を呼び掛けました。
さらに、MSCとしてコンテナ船社が中心になって設立した団体であるDCSA(Digital Container Shipping Association)への積極的参加などデジタル化の取組や脱炭素化の取組について説明を行った後、日本の荷主と情報を共有し協力して日本市場を魅力的にすること、さらには日本企業の応援団として国際競争力の維持向上に貢献したい、と述べておられました。
報告3 「新型コロナが国際物流に与えた影響と今後の見通し」
講演・コーディネーター: 拓殖大学 商学部 教授(日本海事センター客員研究員) 松田 琢磨 氏
まず、新型コロナウイルス感染拡大が海上コンテナ輸送に与えた影響として、①労働力とコンテナ不足、②港湾混雑(港湾の目詰まり、コンテナ不足の連鎖と回転率の低下等)、③運賃高騰と物資輸送の遅れ(現時点では使える船がほとんどないなど)、について報告が行われました。
次に、2022年のコンテナ輸送の見通し(2022年に荷動きは一定程度成長をし船腹量も増加するものの、運賃は高水準で推移し、本格的な正常化は2023年以降になるのではないか、また、ロシアのウクライナ侵攻による需要の腰折れもリスク要因)について松田氏の見通しを述べました。
【総括コメント】
続いて、松田教授から以下のとおり、総括コメントがなされました。
- ①これまでのサプライチェーンの維持は大変困難であり、今後荷主を含めてサプライチェーンの再構築などその在り方について考えなければならないこと、
- ②船社サイドも日本を応援していることについて改めて認識をしてほしいこと、
- ③現在の物流混乱に対しては、船社側のサービスだけでなく、購入する側も対応できる部分があること、
- ④コロナによる混乱の収束があったとしても、すべてコロナ以前の状態に戻ることはないこと、
【事業者への質問と回答】
松田教授から、両講演者に対し、
- ①ウクライナ情勢への対応についてはどのように対応しているか。
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②サプライチェーンの混乱はいつごろまで続くと予想しているか。
について質問がなされ、両講演者から、- ①ロシア・ウクライナ方面へのサービス受付を停止するほか、洋上にあるコンテナについては荷主と相談しながら対応中であること。
- ②今後の見通しを述べることは大変難しく、今回の混乱の要因は一つの要因ではなく、複合的な要因が絡むものなので、解消も難しく、一定の時間がかかるのではないか。
【視聴者からの質問と回答】
視聴者からの質問を受け付けた上で、
- ①北米向けの直航便の維持に向けた取組としてどのような取組が必要か。
- ②造船業者と海運会社の結びつきが弱くなっている現状の中で、今後日本の海事クラスターの発展に必要なことはなにか。
- ③日本発着の船便がフィーダー化しているとの観測があるが、その点についての見解を教えてほしい。
との3つの質問を取り上げて講演者に伺った結果、両講演者から、
①と③:
直航便とトランシップの利用については貨物の構成によって適切に対応を考えていくべきものであり、どのようにデザインしていくのがふさわしいのか今後考えていきたい。直航便だけではマーケットが隔離されてしまうリスクもある。フィーダー輸送もマイナスもあればプラスもある輸送形態である。今後適切に対応していきたい。
②:今後は環境やDXという点で協業を果たしていくことができるのではないかと考えている。
との回答がありました。